魂の園芸用語辞典

摘心(摘芯)

【 てきしん 】

主枝の先端の生長点を摘み取ること。
脇芽の成長を促進させたり、上に伸びる成長をコントロールして、枝ぶりを充実させたりするために行う剪定作業。
芯止め、ピンチとも言う。

摘心とは、つまり「おいしさスイッチ」である。

自分で野菜を育ててみて「こんなに大きくなるの!?」と驚く人は実に多い。たとえばキュウリ、ゴーヤなどのツル性野菜は、軽く身長越えして伸びる。ヘチマにいたっては3m以上。トマトでも放っておくと2mほどに育ってしまう。カボチャのように、横に1m以上伸びる野菜もある。

野菜は自由なので、こっちから「ちょ、ストーーップ!」と意思表示しないと「いく?まだいっちゃう?」とガンガン伸びていく。そのままフリーダムに育てていくと、伸びるほうばかりにエネルギーを使ってしまい、肝心の実ほうに栄養が回らなくなる。

おいしい野菜を作るには、わんこそばのようにタイミングをみてフタをサッとしめ、「これ以上はムリっす!」としっかり意思表示することが大切。摘心は、上や横への成長をストップさせ、おいしい実をたくさん育てるほうにパチンとスイッチを切り替える作業だ。

それでも、野菜を育てていると、ふと思う。

「これ、摘心しなかったらどこまで伸びるんだろう…」

試してみたい衝動にかられたりもするが、いかんせん菜園家は「植物の生長<豊富な収穫」なので、実際に試す冒険家は少ない。

「ジャックと豆の木」のモデルになったと言われるオーストラリア・ビーンズは、なんと40m以上の高さに伸びるという。摘心しないで「リアルジャック」やったワイルドなあなた、ご一報をお待ちしております。

文:アキエダ / 絵:サノア