ド素人の稲作チャレンジ(1)昔ながらの手植えで、田植え

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今年もご指導いただく庄平先生。檄が飛びます。

米作りの「こ」の字もわからないけれど、美味しいごはんが食べたい一心で訪れた場所は新潟県長岡市川口田麦山。田んぼの主である遠山さんご夫妻のご好意で、何と「魚沼産 無農薬・天日干しコシヒカリ」にSodatteスタッフも挑戦です。

稲作に「テキトー」無し。
正確に、丁寧に。

田麦山の「お米の匠」庄平先生ご指導のもと6月2日、田植えから今シーズンの稲作がスタートしました。はやる心を抑えつつ、まずは田植えの前の準備からです。

最初の大切な作業は、田んぼに正確な升目を描くこと。ドジョウやらオタマジャクシやらをかき分けながら、 ピンと張った糸を頼りに真っ直ぐ線を引いていきます。写真の巨大な熊手のような道具は、1度に数本の線が引けるすぐれもの。これで縦横に引いた線が、稲を植え付けるガイド線になります。

ぬかるみなので、以外と難しい線引き。

実はこのガイド線を真っ直ぐに引けるかどうかが、後々の作業効率に大きく影響するんです。去年はそんなことも知らず、曲がったガイド線を見てゲラゲラ笑っておりましたが、知らないってコワイ。その後痛い目に合ったので、今年は真剣に作業に没頭します。そこどけ!カエル! ほら、踏んじまうぞ!タニシ!

なぜ曲がらないことが大切なのかは、次回の記事でくわしくお伝えすることにしましょう。稲作に「テキトー」は無し。この升目の交点に、1苗づつ丁寧に苗を植え付けて行きます。

升目に沿って、正確に植付け。

苗半生。苗の出来で稲作の半分は決まる。

植え付ける苗は、セルトレイで育苗された苗。元気の良い、とても美しい苗です。本来は苗作りもお手伝いしたい所なのですが、いかんせん雪深い地域ですから、私たちが参加するのは田植えからとなってしまいます。

庄平先生が用意してくださる苗は、驚くほどガッシリとしていて節の詰まった立派な苗なんです。おそらく苗作りにも、相当なこだわりをお持ちなんだと思います。ニッコリと笑いながら「苗半生(なえはんしょう)。苗が良くなくっちゃぁ、何をやってもダメ。」とおっしゃる庄平先生。かっこいいなぁ。

茎の太い、元気な苗。

昔ながらの手作業での田植え。

テキトーの通用しない稲作。田植え作業そのものもかなり几帳面に行います。けれどこの几帳面な作業には何か独特な気持ちよさがあるんです。農耕民族の遺伝子がザワザワと騒ぎだすような感覚。不思議です。

最初の頃は、ぬかるみで足が抜けなくなって大騒ぎしましたが、慣れてくると段々とコツが分かってきます。大切なのはリズム。「つま先から足を抜く」というのもコツだけれど、いつまでも一ヶ所にじっとしていると、重量級のワタシなどはどんどん沈んでいってしまうんです。

その昔は田植え歌を歌いながら、心地よいリズムで弾むように田植えしていたのでしょうね。そんな古(いにしえ)を想いつつ。自分の体重を呪いつつ。でも美味しいごはんを頭に浮かべつつの手植えです。

農耕民族の血が騒ぎます。

通常は1ヶ所に数株まとめて植え付けるそうですが、この田んぼでは1ヶ所1苗。他の田んぼと比べると、植付け直後はとても貧弱に見えます。でもこれが、庄平流の田植え方式。

実は去年、初めてこの田んぼで田植えしたときは、これが不安で仕方ありませんでした。他の田んぼと比べてあまりにもスカスカに見えるもんだから、こっそりと1ヶ所に2株植えちゃったりして。最後に苗が足りなくなるなっちゃったりして。

だってねぇ、こんな田んぼは見たこと無かったんですから。スカスカでしょう?

庄平流「疎植」の田んぼ。

稲の間隔は倍の広さ!こだわりのスカスカ植え「疎植」

もし皆さんのお住まいの地域に田んぼがあったら、その稲の植えられている間隔を見てみてください。機械で植えた稲は、そのほとんどが15cmほどの間隔ではないかと思います。

けれど、この田んぼの苗の間隔はその倍の30cm以上。315mmの株間です。このように株間を広くとって植付けることを、疎植(そしょく)と言います。見た目はスカスカに感じますが、株間を大きく空ける事によって、稲は沢山の日光を浴びる事ができます。風通しも良いので病気にもなりにくい。1株1株が大きく元気に育つんだそうです。庄平先生直伝の稲作の要は、この疎植なんです。

「これがねぇ、ビックリするぐらい育ちますよ」と語る遠山さん。

遠山さんは言います。「見ていてくださいね。ウチの田んぼの稲は、台風が来てもほとんど倒れませんから。」

私は関東平野のど真ん中で育ちましたから、田んぼの風景は見慣れています。確かに稲穂が金色に色づく頃にちょうど台風がやって来て、稲が見事に倒れてしまうという光景を何度も見てきました。この稲作に参加するまでは、稲とはそういう性質のものだと思っていました。

日本古来の稲作は「一尺間隔の尺角植」が基本だったそうです。一尺(約30cm)間隔での栽培…。まさに今、庄平先生が指導してくださっている稲作そのもの。しかし戦後、稲作農業の機械化が進んで、いつしか密植の稲作が一般的になってしまった。その近代的な稲作風景しか、私は知らなかったわけです。

果たしてどれぐらいズッシリと実ってくれるのか、何キロのお米が収穫できるのか。大いに楽しみな庄平流稲作。
次回は田んぼ作業の真髄「田の草取り」をご紹介いたしましょう。

大変なんだよぉーこれが。(笑)お楽しみに。