間引き
【 まびき 】
播種し発芽した芽の中から、成長の鈍いものを抜く、切るなどして数を減らすこと。
密集して日光不足や肥料不足になって徒長してしまうことを防ぐために、込み合っている場所から随時植物を引き抜き、あるいは刈り取り、人為的に淘汰する作業。
間引きとはつまり、「碇シンジタイム」である。
家庭菜園を始めたばかりの人が最初に感じる疑問に、「芽が出たんなら、間引きしないでぜんぶ育てればいいんじゃね? てか、そもそも後で抜くくらいなら最初からいっぱい種まかなくていいんじゃね?」がある。
ごもっともである。
種を多めにまくのには理由がある。ひとつ。種をまいたからといって、100%芽が出るとは限らないこと。ふたつ。幼い苗は生命力が弱いため、互いに寄り添うように密集させたほうがよく育つこと。
そうしてある程度育てたところで、成長が遅い苗や弱々しい苗を抜くことで、日当たりや栄養分のまわりを良くし、元気な苗を丈夫に育てていくことができる。まことに合理的なプロセスである。
しかし育てる側の人間は、そんなに合理的にはできてない。種をまいた瞬間から今か今かと発芽を心待ちにし、小さな芽がけなげに大きくなっていくのを「いーこちゃんねー♪」と見守ってきた身にとって、その苗を抜くというのはあまりにも残酷な天使のテーゼである。
ちゃんと間引きしないと、成長に必要な栄養やスペースが確保できない。初心者はここで苗を全部育てて全部の野菜をまずくする、という失敗をよくする。愛をはきちがえたらいけません。
人としての決断力を問われる、最初の難関。ここはひとつ「エヴァンゲリオン」の碇シンジになりきって「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…」とつぶやきながら間引くことをおすすめします。
ちなみに「みんなかわいくて間引きできなあーい」などという女性は「だめんず・うぉーかー」になる可能性があるので、人生に要注意。
文:アキエダ / 絵:サノア