矮性
【 わいせい 】
動植物が近縁の生物の一般的な大きさよりも小形なまま成熟する性質。主に園芸分野において、著しく草丈・樹高が低いことを指す用語として用いられる。遺伝的に矮性を示す矮性品種・矮性種も存在するが、矮化剤処理や接ぎ木によって人為的に矮化を行う例もある。
1960年代に団地などの高層住宅が増えたことで、プランターや小庭などの小スペースで栽培できるように、丈の低い矮性種が急速に普及したと言われている。
矮性とはつまり、「小泉今日子と七人のこびと」である。
商人が悪徳代官や政治家に袖の下で渡して「そちもワルじゃのう」とか言うやつ。それは賄賂。
その音を聞くだけでドキドキしちゃう、学校の女子更衣室でヒソヒソ話した熱い夏。それは猥談。
ワイはワイでも「賄=おくりもの」でも「猥=みだら」でもなく「矮=小さい」というお話である。
多くの野菜は天に向かって、あるいは地を這うように、草丈1m以上は軽く伸びる。それが、矮性で有名なミニトマトの「レジナ」は、草丈なんと30cm以下。一番生い茂っているピーク時でも、両手ですっぽり包めてしまいそうな「ちんまり」サイズ。それでいて葉は青々と生い茂り、実は鈴なりにつき、完熟したトマトは一般種と遜色ない味になっているというのだ。
それはまるで、芸能人に街で遭遇した時の感情に似ている。
「なにあれ顔ちっちゃ!! 体ほっそほそっ!!」みたいな?
「ホントにあそこに内臓入ってんの?」みたいな?
「とても同じ生物と思えない」みたいな?
そんな数ある「実物見て腰抜けそうになる」芸能人遭遇譚の最たるものが、小泉今日子である。キョンキョンである。彼女を見た人は「テレビで見ても相当顔ちっちゃいのに、本物ははるかにちっちゃい」という現実に打ちのめされるという。たぶんイトカワあたりから来た宇宙人だと思う。
ちなみに矮性は英語で「ドワーフ」。ドワーフとは「小びと」という意味だ。ファンタジーの常連、簡単に言えば白雪姫の七人の小びとがドワーフである。それを知った日から矮性品種を「キョン2にまとわりつく七人の小びとの図」としか見えなくなってしまった。ミニトマトのまわりを手をつないでハイホーハイホー踊っている小さいおっさんたち。夜見たら泣くかもしれない。
伝説によると、ドワーフは石から生まれた頑強な体を持ち、高度な錬金術や工芸技能をハイホーしているという。その調子でおいしい野菜もハイホーしてほしいし、育てる側にもグリーンフィンガー的なハイホーをハイホーしていただきたいものだ。
文:アキエダ / 絵:サノア