6月の田植えから5ヶ月。長かったような短かったような今年の稲作も、クライマックスを迎えました。10月8日、秋晴れの田麦山は、まさに稲刈り日和。前週の台風にも負けずに、私たちを出迎えてくれた黄金色の田んぼで、いよいよ稲刈りと天日干しの作業「ハザ掛け」を行ってきました。
見事に倒れなかった稲
稲刈りの時期は、ちょうど台風シーズンと重なります。台風で稲が倒れてしまう光景を、皆さんも目にした事があるかと思います。実は稲が倒れてしまうと、水分を含んで、熟したモミが発芽してしまったりするんです。
さて。私たちの田んぼは、どうでしょうか。
しっかりと根が張れるように30cm以上も間隔をあけた「疎植」にこだわり、そして、力強く育った根を傷めないように、極端な中干しもしませんでした。そしてこれが、その結果です。じゃーん!
どうです?見事なまでに倒れておりません!流石、庄平流!
その代わり…普通は稲刈りなんて、スニーカーでも出来るぐらいに土が乾いてるそうですが、この田んぼでは最後の最後まで長靴が必須です。
ああ、ぬかるんでるね、気をつけなくちゃね…なんて声を掛け合いながら、まずは、周りから稲を鎌で刈っていきます。
真夏にあんなに苦労して除草したのに、やっぱりヒエはまだまだ沢山残っています。稲も逞しいけど、ヒエは本当に根性があります。嫌になっちゃう。
一緒に脱穀されてしまわないよう、ヒエを取り除きながら、丁寧に刈り取っていきます。地道な作業ですが、やっぱり収穫は楽しいものです。カサカサと稲穂が揺れる音に思わずニンマリしてしまいます。
刈り取った稲は直径10cmほどの束にして、ワラで纏め上げていきます。この縛り方が良くないと、後の作業「ハザ掛け」の時にばらけてしまうのです。農作業ではこんな風に、縛り方や束ね方がとても大事。「なーんも、難しい事ないじゃない?」とおっしゃる庄平先生。いやいや、これが難しいのよねぇ…。
秘密兵器登場!
去年もこの束ね方で散々苦労して、何度もやり直しながら、全ての稲を手で刈っていったのですが、全ての作業が終わる頃には、すっかり夜になってしまいました。
が!今年は違うぞ!スーパーマシンが投入される事になっているんでーす。
ふっふっふ。ぐはははー!カッコええ!!
この小型の稲刈りマシンは「バインダー」と言います。これは「バインダー(bind = 束ねる)」という名の通り、刈り取った稲は自動的に束になって出てきます。すごくお利口さん。人間の知恵って凄いわー。
大きな田んぼで使われているコンバインは、通常稲を刈り取りながら脱穀まで行ってしまいます。ワラの部分は細かくカットされて、そのまま田んぼに漉き込んで堆肥にするそうです。コンバインで収穫されたお米はその後、機械を使って乾燥させるんですって。それが現代のお米の収穫。とても合理的に考えられています。
けれど、私たちは天日干し(ハザ掛け)で乾燥させるので、稲ワラがついた状態にしておきます。コンバインと比べると、2手間も3手間も余分に掛かってしまいますが、折角頑張って育てたお米ですから、そこはぐっと我慢です。
刈り取った稲を軽トラ2台に積み込んで、ハザ掛けを行う庄平先生のご自宅に全員で移動です。
あともう一仕事で今年の稲刈りが終わってしまう…と思うと、秋の風が少し寂しく感じます。
お日さまの恵みで、じっくり乾燥させる
都心のスーパーなどでは、なかなか「天日干し米」にはお目にかかれませんが、日本の農村の景色に欠かせないのが、このハザ。刈り取った稲を乾燥させるための昔ながらの方法です。
天日干しは近年また見直されてきているそうで、確かに車で走っていると、あちらこちらでこのハザ掛けを見かけました。
一般的なのは稲刈り後の田んぼに骨組みを建てたものですが、私たちのハザは高層建築。省スペースな作りになってます。天日干しは2週間程の時間を要するため、庄平先生のご自宅前に組み上げて、管理していただきます。
脱穀までをお任せして、玄米になって東京に届きます。残った稲ワラは、堆肥や資材として使うために、庄平先生にお返しするんですって。余す所なく、稲はまた次の恵みのためにサイクルされるんですね。
この新米が口に入るのはまだまだ先ですが、無農薬でヒエと炎天下と格闘しながら作ったお米ですからね、
5ヶ月間の稲作…いや、田遊び、これにて終了!
とうとう終わってしまった…。寂しいなぁ。
そうなんです。私たちがやった作業は、最低限のことだけ。本当ならばもっともっと手間をかけるべきなんです。
炎天下でヘトヘトになりながら「やり切った」と自己満足してましたけど、私たちのそれは、稲作ではなく「田遊び」。
農薬に頼らないということは、それだけ人の手に頼るということ。
安全で美味しいお米は、それだけ手間が掛かっているということです。
「今年はさぁ、あと2回もヒエ取りすれば、収量はこの倍になったのに。」と庄平先生からのダメ出しも…。
しかしながら、その田遊びに全面協力してくださった庄平先生はじめ田麦山の皆様に、心からお礼を申し上げたいと思います。
前日の夜中2時まで飲めや歌えやの大騒ぎをしたのにも関わらず、朝5時には作業の準備を始める“スーパーマン”庄平先生。
「東京からわざわざ来るんだから」と、私たちに毎回、美味しい釜焚きご飯をご馳走してくださったオサムさん。
そして快く宿泊場所をご提供くださり、穏やかに見守ってくださったマサオさん。
フルサポートしてくださった遠山さんご夫妻、一緒に汗を流して作業してくださった皆さん、
本当にありがとうございました。
さぁて、飯炊き鍋をピカピカに磨いて、新米の到着を待つことにしましょう!
最後に、庄平先生の大切なお言葉を。
やらなきゃいけんことは、みーんな稲が教えてくれる。
ほかの野菜も一緒。
だから、うんとよーく見てれば良いの。
そうすりゃ、自然に上手くなるから。